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2024年2月24日土曜日

第303回研究会

日時:2024年3月2日(土)13時~18時 *2つ報告があります。開始・終了時間にご注意ください。

会場:慶應義塾大学三田キャンパス南館(地下2階)2B15教室

キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html

*南館はキャンパスマップ2番の建物です。正門正面の南校舎ではありませんのでご注意ください。 

 

報告者①:土屋武(中央大学) 13時~15時20分(予定)

報告判例①:2022年6月15日の第2法廷判決(BVerfGE 162, 207; 2 BvE 4/20, 2 BvE 5/20 - Äußerung der Bundeskanzlerin zur Ministerpräsidentenwahl in Thüringen

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/06/es20220615_2bve000420.html

判決要旨:

  1. 連邦首相について、職務上の行為と職務に関わらない政治競争への関与を区別する基準は、その他の内閣構成員と同一である。
  2. 連邦政府内の権限秩序から、たしかに――その他の内閣構成員と比較して――連邦首相の発言権の対象はより広いが、そこから中立性および客観性の要請に関して別の要求が生じるものではない。
  3. 不平等取扱いを正当化し、連邦政府に政党の機会均等への介入権限を与える根拠は、憲法によって正当化され、政党の機会均等原則と釣り合いをとることのできる重要性を持つものでなければならない。
  4. 政党の機会均等と等価な憲法上の法益として、連邦政府の安定性および行為能力の保護ならびに国際コミュニティにおけるドイツ連邦共和国の信用性に対する信頼が考慮される。
  5. 連邦首相には、連邦政府の安定性と活動能力の維持のためにどのような措置が必要かという問題につき、外交領域の場合と同じく広い評価余地が認められる。政党の機会均等の原則に介入する場合、そのような介入を正当化する憲法上の法益が事実として不利益的影響を受け、基本法21条1項1文の政党の機会均等の権利への介入を必要としたことが説得的に説明されるか、その他のかたちで明らかにされなければならない。


報告者②:辛嶋了憲(広島大学) 15時30分~18時(予定)

報告判例②:2022年7月21日の第1法廷決定(BVerfGE 162, 378-454, BVerfG, Beschluss des Ersten Senats vom 21. Juli 2022 - 1 BvR 469/20)

https://www.bverfg.de/e/rs20220721_1bvr046920.html

決定要旨:

  1. 親の権利(基本法6条2項第1文)は、国家との関係における自由権である。国家は親の養育の権利(Erziehungsrecht)を正当化の根拠なく介入してはならない。他方、子との関係においては、子の福祉が親の養育(Pflege und Erziehung)の重要な基準を形成する。
  2. 成長段階故に未だ自己決定できない子どもの場合の予防接種実施に関する判断は、親の健康監護(Gesundheitssorge)の重要な要素の一つであり、基本法6条2項第1文の保護領域に含まれる。しかし、子の福祉に向けなければならない子への健康監護の実行の場合には、以下の場合――すなわち、親が自らの身体的不可侵性(Integrität)に関する自己決定権に基づき医学上合理性のある水準に反する場合――と比べると、医学水準に反する親の自由の程度は低い。
  3. 基本法6条2項第1文は基本法19条1項第2文の挙示義務(Zitergebot)に含まれない。

クリップボード@月報第315号

黒木忠正著/福山宏改訂編著『3訂版 はじめての入管法』(日本加除出版、2024年2月)


入井凡乃「立法者の事後的是正義務の法的構造——ドイツの判例・学説を中心に」法学政治学論究139号(2023年)


山田哲史「法廷での被告人の主張に対する処罰と表現の自由──ミルイェヴィッチ判決」人権判例報〔小畑郁・江島晶子 責任編集〕7号(2023年12月)77-83頁


山田哲史「『人権訴訟』への取り組み方──国際人権法・憲法・行政法をいかに用いるか」判例時報2576号(2024年)


自治研究100巻2号(2024年)

初宿正典「日本におけるライプホルツ研究について」

阿部泰隆「行政権と司法権の癒着、裁判の公正を害する三権分立違反の腐敗(2・完)——判検交流・裁判官の中央行政委員会委員就任・裁判官の公証人就任・租税調査官を廃止せよ」

棟久敬「【ドイツ憲法判例研究〔273〕】連邦緊急ブレーキ決定II——学校閉鎖」

法学セミナー830号(2024年)

栗島智明「憲法と行政法の交差点【第24回】立法国賠訴訟における実体的な憲法判断の先行――付随的違憲審査制の黄昏?」

木下智史=松本和彦村西良太片桐直人=伊藤建「FOCUS憲法Ⅳ【最終回・第10回】[座談会]判決の射程の評価と学説の判例への向き合い方 (2)」

メディア法研究2号〔鈴木秀美 責任編集〕(2024年1月) 

鈴木秀美「ドイツにおけるヘイトスピーチ規制の現在——2021年のヘイト扇動的侮辱罪(刑法192a条)の新設を中心に」27-47頁

石塚壮太郎「メルケル首相によるAfD批判と『戦う民主主義』——メルケル判決」173-179頁


2023年12月31日日曜日

第303回研究会(2024/01/02 22:45修正)

日時:2024年1月6日(土)15時~18時

※報告者のご都合で開始時刻・終了時刻ともに1時間遅らせることになりました。(2024/01/02 22:45修正) 

会場:慶應義塾大学三田キャンパス南校舎436教室(正門正面の建物3階)

キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html(4番の建物)

報告者:岡田俊幸(日本大学)

報告判例:2022年1月18日の第1法廷第1部会決定(NJW 2022, 844; 1 BvR 1565/21, 1 BvR 2058 /21, 1 BvR 2057/21, 1 BvR 2056/21, 1 BvR 2055/21, 1 BvR 2054/21, 1 BvR 2575/21, 1 BvR 2574/21, 1 BvR 1936/21, 1 BvR 1669/21, 1 BvR 1566/21 - Reduktionspfades für Treibhausgase)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/01/rk20220118_1bvr156521.html


決定要旨:

近い将来の一定の期間まで排出することが許されるCO₂総量を定める規制が後続の時期に対して制約類似の事前作用を発生させる場合、異議申立人は、憲法異議の訴えによって、この規制を攻撃することができる。制約類似の事前作用は、各々の立法者が、全体としてなお許容可能なCO₂排出に関する大まかに認識できるバジェットに拘束されていることを要件としている。加えて、異議申立人は、原則として、現在において許容されているCO₂排出の全体に向けられなければならないのであり、たんに国の個別的な作為又は不作為に向けるものであってはならない。各州については、CO₂残余バジェットを少なくとも大まかに認識できるような削減基準は、現在のところ、存在しない。


クリップボード@月報第314号

赤坂幸一・大河内美紀・宍戸常寿・西村裕一・林知更・山本龍彦『日本国憲法のアイデンティティ』(有斐閣、2023年11月)

石村修「文化国家と自治体」専修ロージャナル19号(2023年12月)

岡田健一郎「『ビジネスと人権に関する指導原則』は日本の憲法論にどのような影響を与えるか」一橋法学22巻3号(2023.11)

小林宇宙「1926年のライヒ議会選挙制度改革」一橋法学22巻2号(2023年7月)

柴田憲司「憲法事例分析の技法〔第22回〕同性婚と憲法上の権利・平等・制度」法学教室520号(2023年12月)

毛利透「ロールズとハーバーマスにおける宗教と政治」苅部直・瀧井一博・梅田百合香編著『宗教・抗争・政治—主権国家の始原と現在』(千倉書房、2023年12月)

自治研究100巻1号(2023年1月)

  • 阿部泰隆「行政権と司法権の癒着、裁判の公正を害する三権分立違反の腐敗(一)」
  • ヨハネス・ブーフハイム/栗島智明・巽智彦訳「行政法におけるアクチオ的思考(上)」
  • 初宿正典宮村教平訳「ドイツのラント憲法:ザールラント憲法(三・完)」
  • 中西優美子「【EU法における先決裁定手続に関する研究(55)】オーフス条約九条三項及びEU基本権憲章四七条によるEU構成国における司法アクセスの保障(V(8))」
  • 門田美貴「ドイツ憲法判例研究〔272〕新たに出訴期間を開始させる「介入」としての情報機関から警察への情報提供」


2023年11月25日土曜日

第302回研究会

日時:2023年12月2日(土)14時~17時 

会場:日本大学法学部本館141講堂

報告者:岡田健一郎(高知大学)

報告判例:2021年6月8日の第1法廷決定(BVerfGE 158, 170: 1 BvR 2771/18 - (IT-Sicherheitslücken ITセキュリティ脆弱性

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2021/06/rs20210608_1bvr277118.html


判決要旨:

  1. 基本法10条1項は防御権を根拠づけることと並んで、通信の秘密に該当するコミュニケーションに対する第三者による侵害からの保護の国家への委託を根拠づけている。
  2. a)ITシステムの機密性と完全性に関する基本権上の保障は、国家に対し、システムに対する第三者による攻撃からの保護に寄与することを義務づける。
    b)国家の基本権保護義務はまた、一方で未知の脆弱性を用いた第三者による攻撃からITシステムを保護すること、他方で危険防除に役立つ端末通信傍受を可能にするそのような脆弱性を開いておくこと、という諸目的の衝突を基本権適合的に解消するための調整も国家に要求する。
  3. 立法上の保護義務の違反を主張するためには、特別な主張責任が存在する。そのような憲法異議は、法律上の調整関係を全体的に把握しなければならない。そこには、異議を申し立てられている規範の集合体の調整について説明し、それらが総じて〔ITシステムを〕憲法上不十分にしか保護していない理由を根拠づけることが含まれている。
  4. 憲法異議が法律に直接向けられている場合は、補完性の原則に従い、行政裁判上の確認の訴えもしくは差止めの訴えの提起も今回の法的手段〔憲法異議〕の前に必要である。このことは以下の場合には必要ない、すなわち、ある規範の評価のみが特定的に憲法上の問題を惹起しており、そして、先行する専門裁判所の審査によってより良い判決の基礎が提供されることが期待されない場合には。このことはまた、立法上の保儀義務違反に対する異議申立の場合でも同様である。


クリップボード@月報第313号

玉蟲由樹「判例クローズアップ・市庁舎前『広場』での集会規制」法学教室518号(2023年10月)

Mitsuhiro MATSUBARA, Staat und Verfassung - Ein Vergleich Japan-Deutschland, JöR 2023, S. 187-207

法学セミナー827号(2023年11月)

  • 神橋一彦「憲法と行政法の交差点【第21回】防衛作用の特殊性と行政法」
  • 實原隆志「マイナンバー制度とは?」

自治研究99巻11号(2023年11月)

  • 初宿正典・宮村教平「ドイツのラント憲法:ザールラント憲法(1)」
  • 波多江悟史「ドイツ憲法判例研究(270)州による放送財源州際協定締結拒否の合憲性」


2023年11月1日水曜日

第301回研究会

  • 日時:2023年11月4日(土)14時~17時
  • 会場:慶應義塾大学三田キャンパス411教室
*日大が学園祭のため11月の会場は慶大です。
キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html (キャンパスマップ4番の建物)
  • 報告者:石塚壮太郎(日本大学)
  • 報告判例:2022年10月19日の第1法廷決定(BVerfGE 163, 254; 1 BvL 3/21 – Sonderbedarfsstufe 庇護申請者給付法における特別需要等級)
    https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/10/ls20221019_1bvl000321.html
  • 判決要旨:
    1. 基本法1条1項から生じる人間に値する生存最低限の保障のための客観的義務は、困窮状況で物質的な支援を得る給付請求権に対応する。その請求権は、人間に値する生存の確保のために絶対的に必要な手段に及ぶ。この社会的給付は、継続的に現実適合的に算定されなければならず、それにより確保されるのは、人間に値する生存への配慮が実際になされることである。それらの給付は、需要がすでに他の方法で充足され、それゆえ給付が生存確保のために不要であるという推測に基づくことのみによって、またこのことが具体的な状況において十分に主張可能であることなしには、一律に減額されえない。
    2. 基本法は、人間に値する生存の確保のための社会的給付の投入を、後置原則と結びつけることを妨げない。したがって、要扶助性の克服に自ら積極的に協力することや、困窮性にそもそも陥らないようにすることを求める立法者の決定と、基本法は矛盾しない。立法者は原則として、生存確保のための給付の受給を、困窮性を直接に回避または緩和するのに適合的で必要で相当な――実際に使える――手段を用いる責務の充足と結びつけることができる。しかし、生存確保のための給付の一律の減額がそのような責務に基づきうるのは、それらの責務が実際に満たされることができ、それによりこの範囲での需要が証明可能な形で充足される場合のみである。