連絡事項

月報クリップボードに掲載すべき情報をご存じの方は、運営委員・月報担当までご連絡ください。

所属先の変更等で、メールアドレスに変更がある場合には、速やかに運営委員・月報担当までご連絡下さい。

月報メールが戻ってくるアドレスがいくつかあります。研究会前にもかかわらず月報が届かないという方は急ぎご連絡ください。



2016年12月31日土曜日

1月6日(土):第234研究会

日時:2017年1月7 日(土)13時  *報告2つのため13時から研究会を開催します。

【報告①(サブ報告)13:00~14:50】
報告者:鈴木秀美(慶應義塾大学)
報告判例:2015年9月14日の第1法廷第3部会決定(1 BvR 857/15)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2015/09/rk20150914_1bvr085715.html

判例要旨
地裁判決の(個人情報が匿名化された)写しの新聞社への送付拒否を認めた上級行政裁判所決定によるプレスの自由侵害が認められた事件


【報告②(メイン報告)15:00~18:00】
報告者:石塚壮太郎(慶應義塾大学大学院博士課程)
報告判例:2016年5月31日の第1法廷判決(1 BvR 1585/13)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2016/05/rs20160531_1bvr158513.html

判例要旨
  1. 基本法5条3項1文で要請される芸術に対する特別の考慮は、著作権法上保護される諸対象の一部の借用を、芸術的表現および芸術的造形の手段として承認することを求める。利用方法をほんの少ししか制約しない、著作権または給付保護権(Leistungsschutzrecht)への介入が、この発展の自由と対置される場合には、権利保持者の利用利益は、芸術の自由に有利となるように、後退しなければならないこともありうる。
  2. 等価で後演されうる(gleichwertig nachspielbar)音源媒体のサンプルの使用を、一般的に音源媒体作成者の許諾にかからしめることを、財産の保護から導くことはできない。これが、芸術家の創作過程を十分に考慮していないからである。
  3. 専門裁判所によるEU法の適用の統制に際し、連邦憲法裁判所は、とりわけ専門裁判所が、欧州司法裁判所への呈示によって差し迫った基本権侵害を避けられたかどうか、そして基本法における基本権の絶対的な最低水準が確保されているかを審査する。

クリップボード@月報第244号

井上典之
『憲法の時間』(有斐閣、2016)

鈴木秀美=山田健太編著
『放送制度概論-新・放送法を読みとく』(商事法務、2017.1) *お正月明けに書店に並びます。
鈴木秀美 第2編第1章「放送法の構成」、第5章「日本放送協会」
西土彰一郎 第2編第2章「放送の自由」
杉原周治 第2編第8章「放送大学学園、放送番組アーカイブ、電波監理審議会権限強化案」
丸山敦裕 第2編第11章「国際放送・内外放送・要請放送」

トーマス・ヴュルテンベルガー著・畑尻剛編訳
『トーマス・ヴュルテンベルガー論文集・国家と憲法の正統化について』(中央大学出版部、2016年)
以下の会員の翻訳所収:工藤達朗、柴田憲司、古野豊秋、嶋崎健太郎、高橋雅人、石村修、山本悦夫、玉蟲由樹、斎藤一久、土屋武、太田航平、根森健、武市周作(掲載順)

片桐直人
「ドイツにおける政府提出法案の起草過程とその規律」川﨑政司・大沢秀介編『現代統治構造の動態と展望――法形成をめぐる政治と法』(尚学社、2016)186-208頁

浅川千尋
「EUの政治・経済統合と機構」天理大学EU研究会編『ドイツ統一から探るヨーロッパのゆくえ』(法律文化社、2016)60-76頁

高田倫子
【ドイツ憲法判例研究187】「裁判官及び検察官の俸給の合憲性[ドイツ連邦憲法裁判所第2法廷2015.5.5判決]」自治研究92巻12号(2016.12)123-131頁

中西優美子
【ドイツ憲法判例研究188】「EU欧州逮捕状の執行に関するアイデンティティコントロールの実施」自治研究93巻1号(2017年)112-121頁

畑尻剛
「憲法の規範力と憲法裁判所――ドイツの連邦憲法裁判所に対する世論調査を素材として」法学新報123巻5・6号(2016)731-757頁

12月3日(土):第233回研究会

日時:2016年12月3 日(土) 13時  *報告2つのため13時から研究会を開催します。

【メイン報告 13:00~15:50】
報告者:片桐直人(大阪大学)
報告判例:2016年6月21日の第2法廷判決(OMT合憲判決)
(2 BvR 2728/13, 2 BvR 2729/13, 2 BvR 2730/13, 2 BvR 2731/13, 2 BvE 13/13)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2016/06/rs20160621_2bvr272813.html
判例要旨
  1. 国民は、欧州統合プロセスにおいて民主的な影響力を行使する可能性を確保することに関して、基本的に、高権的諸権限の委譲が基本法23条1項2文並びに3文及び79条2項において基本法の定める範囲でのみ行われることを求める権利を有する。 
  2. EUの諸機関の行為が、自らに与えられた権限を踰越する場合には、基本法23条1項2文に基づいて同意法律によって定められた統合プログラムに違反するとともに、基本法20条2項1文が定める国民主権の原則に違反する。 
  3. 憲法機関は、自らに課せられた統合責任に基づき、EUの諸機関の行為が基本法の同一性を損ない、あるいは、与えられた権限を踰越する場合に、それに対抗する義務を負う。 
  4. 欧州中央銀行のOMT決定及びその将来の実効は、EU司法裁判所のEU法解釈によれば、権限踰越の行為ではなく、条約上禁じられた中央銀行による直接の財政援助に明らかに該当するとも言えない。ただし、OMTプログラムが権限踰越の行為ではないのは、EU司法裁判所が示した枠組みにとどまる限りにおいてであり、連邦銀行は、OMTプログラムがかかる枠内で行われている限りにおいて、OMTプログラムの実行に参加することができる。5.また、連邦政府と連邦議会は、その財政政策上の全体責任に基づき一定の義務を負っているが、OMTプログラムに反対する義務があるとはいえない。ただし、連邦政府と連邦議会は、将来のOMTプログラムの実行に対して継続的な監視をする義務を負う。 

【サブ報告 16:00~18:00】
報告者:松原有里(明治大学)
報告判例:2015年12月15日の第2法廷決定(2 BvL 1/12)
2015年12月15日の第2法廷決定(2 BvL 1/12)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2015/12/ls20151215_2bvl000112.html

判例要旨
  1. ドイツ連邦憲法裁判所法80条2項1文は、提示裁判所に想定しうるいかなる法解釈を推測することも義務づけてはいない。提示問題について判断をするためには、それが、明らかに根拠がない訳ではない限りにおいて、基本的に同裁判所の法解釈が基準となる。 
  2. ボン基本法59条2条1文は、条約が、別の特別なセービング・クローズ(=特典条項)の適用範囲、とりわけボン基本法の23条~25条の規定に該当しない限りにおいて、(ドイツ)国内法上、個別連邦法の順位に来る。 
  3. ボン基本法59条2項1文は、条約の解釈原理(後法は前法に優先するという原則)の効力を妨げない。後法の起草者は、-国民の総意という表現を選択することによって適した-基本法上に示されている前法の起草者の立法行為の範囲内で、これを修正することができる。 
  4. 国際法違反の条文の違憲性は、遡及的に、基本法の条文上書かれていない国際法に沿った(国内法の解釈・運用:筆者注)原則には根拠づけられない。同原則は、憲法の順位(Verfassungsrang)にあるものの、すべての国際公法上の規範の無制限の(=無条件の)遵守という憲法上の義務をも内包しているものではない。 
  5. 法治国家原則からは、国際公法上(限定的な)法律に対する優位もしくは後法は前法に優先する原則の制限は導き出されない。

クリップボード@月報第244号

石塚壮太郎「『生存権』の法的性質――主観的権利としての成立とその意義」法学政治学論究110号(2016)101-134頁

鈴木秀美
「メディアの公共性をめぐる制度と法」大石裕ほか編『メディアの公共性――転換期における公共放送』(慶應義塾大学出版会、2016.10)39-57頁

中西優美子
「EU欧州逮捕状枠組み決定の実施と基本権の保障」【EU法における先決裁定手続に関する研究】自治研究92巻11号(2016.11)113-124頁

前硲大志
「【ドイツ憲法判例研究186】法案審議合同協議会の作業部会への鏡像原則の妥当の有無[連邦憲法裁判所第二法廷2015.9.22判決]」自治研究92巻11号(2016.11)149-157頁