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2017年12月4日月曜日

12月9日(土):第243回研究会

日時:2017年12月9日(土) 14時-17時

会場早稲田大学早稲田キャンパス10号館101教室 *専修大学ではありません。ご注意ください。

*会場はキャンパスの奥まった場所にあります。以下のウェブサイトでご確認ください。
*終了後、18時より戸波先生古稀記念論文集の献呈式をリーガロイヤルホテルにて開催します。

報告者:土屋武(新潟大学)

報告判例:2017年1月17日の第2法廷判決[NPD判決](2 BvB 1/13)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2017/01/bs20170117_2bvb000113.html
判例要旨
1. 基本法21条2項に基づく政党禁止は、民主的法治国が組織的な敵に対する武器として最も先鋭的にしてさらには両刃の剣である。政党禁止は、憲法敵対的な基本的傾向を持った政党の存在とその団体として典型的な作用可能性に由来するリスクに対処する。
2. 政党の国家からの自由の要請と公正な手続の原則は、禁止手続を実施するうえでも必要不可欠である。
  • a) 政党に対する禁止手続中に当該政党の指導層に対して行われる秘密調査員の捜査活動は、厳格な国家からの自由の要請と一致しない。
  • b) 禁止の申立ての理由が、少なくとも一部が秘密調査員の活動によって成立する証拠資料に基づいている場合も同様である。
  • c) 公正な手続の原則が命じるところでは、禁止手続期間中の憲法擁護庁による政党の観察が政党の訴訟戦略の探知に役立つものであってはならず、また観察の枠内で得られた訴訟戦略に関する情報は手続の中で政党に不利な形で用いられてはならない。
  • d) 手続中止となるような障害は、憲法違反のありうる法的効果の最終手段としてのみ顧慮される。除去できない手続的障害の存在を確認するためには、一方で法治国家的な手続的要求と他方で当該手続の予防目的との間の衡量が必要である。
3. 自由で民主的な基本秩序の概念には、自由な立憲国家それ自体にとって欠くべからざるような中心的な基本原理のみが含まれる。
  • a) 自由で民主的な基本秩序は、その出発点を人間の尊厳に見いだす(基本法1条1項)。人間の尊厳の保障はとりわけ、人格的個別性、アイデンティティおよびインテグリティの維持、ならびに基本的な法的平等を含む。
  • b) さらに民主制原理は自由で民主的な基本秩序の本質的な構成部分である。民主制にとって放棄できないのが、すべての市民の政治的意思形成プロセスへの同権的参加可能性と国家権力の行使が国民にさかのぼって結び付けられることである(基本法20条1項および2項)。
  • c) 最後に、自由で民主的な基本秩序の概念にとって規定的なのが、法治国原理に根ざした公権力の法的拘束(基本法20条3項)と独立の裁判所によるこの拘束の統制である。同時に実定憲法によって保障された個人の自由は、物理的暴力の使用は裁判所の拘束的な統制に服する国家機関に留保されることを要求する。
4. 自由で民主的な基本秩序の除去の概念は、少なくともその本質的要素の廃止または他の憲法秩序や他の統治システムによる転換を意味する。ある政党がその政治的コンセプトによれば十分な強度をもって自由で民主的な基本秩序の感知可能なspürbar危険をもたらす場合には、〔自由で民主的な基本秩序を〕制約していることを出発点とすることができる。

5. 政党が自由で民主的な基本秩序の除去または制約を希求していることは、当該政党の目標またはその支持者の行動から明らかにされなければならない。
  • a) 政党の目標とは、政党が政治的に希求するものの総体である。
  • b) 支持者とは、党員でないとしても、政党のために力を尽くし、そして当該政党を信奉するすべての人である。
  • c) 政党にはまず、当該政党の機関、とりわけ政党指導部および指導的幹部の活動が含まれる。単なる党員の意見表明や行為の場合は、それがある政治的コンテクストの中にあり、政党がそれを是認または受忍した場合にのみ帰属することが可能である。政党に属していない支持者の場合には、原則としてその行動に政党が影響を受け、政党が行動を是認することが帰属可能性の必要条件である。具体的な帰属連関がなく犯罪行為や暴力行為を一括して帰属することは顧慮されない。免責特権の原則は、議会での意見表明の帰属を排除するものではない。

6. 政党が自由で民主的な基本秩序に反する目標を設定するだけでは政党禁止命令には十分ではない。むしろ政党は自由で民主的な基本秩序の制約または除去を「目指す」ものでなければならない。
  • a) そのような「目指すこと」は概念上、能動的行為を前提とする。政党禁止は心情・世界観の禁止ではない。政党による自由で民主的な基本秩序の克服のための限界値を超えることが必要である。
  • b) 特別な準備行為の意味で自由で民主的な基本秩序の制約もしくは除去またはドイツ連邦共和国の尊属を脅かすことに向けられた計画的措置が存在しなければならない。
  • c) 基本法21条1項により保護される法益に対する具体的危険がそれによって根拠づけられることは必要ない。もっとも、自由で民主的な基本秩序またはドイツ連邦共和国の存続に反対する行為の結果を少なくとも可能と思わせるような重要な具体的な手掛かりが必要である。
  • d) 暴力の使用はすでにそれだけで見ても、基本法21条2項の保護法益に対する攻撃の成功の可能性の想定を正当化するのに十分に重要である。ある政党が地域的に限定された空間で、政治的意思形成プロセスへのすべての者の自由で同権的な参加を持続的に制約するにふさわしい「不安の雰囲気〔不安感〕」をもたらす場合も同様である

7. 不文の構成要件要素を想定する余地は、基本法21条2項の枠内では存在しない。
  • a) ある政党が民族社会主義に本質的に類似していることは、それだけでは政党禁止命令を正当化しない。もっとも、それには憲法敵対的目標の追及に関して間接証拠として重大な意義が認められる。
  • b) 比例原則の個別的適用は必要ない。
8. 政党の違憲確認にかかる上述の要求〔要件〕は、欧州人権裁判所が人権及び基本的自由の保護のための条約(欧州人権条約EMRK)の政党禁止に関する判例から導き出した基準と一致する。
9. 以上のような基準に基づけば、禁止の申立てには理由がない。
  • a) 被申立人は、その目標および支持者の行動によれば、自由で民主的な基本秩序の除去を希求している。民族的な「国民共同体」に方向づけられた権威的な「国民国家」により既存の憲法秩序を転換することを目指している。このような政治的コンセプトは、民族的国民共同体に属さないすべての者の人間の尊厳を軽視するものであり、基本法の民主制原理と一致しない。
  • b) 被申立人は計画的に活動し、自由で民主的な基本秩序に反対する目標を達成することで性格づけられる。
  • c) しかし、このような行為が生硬に至ることが少なくとも可能であると思わせるような重要な具体的手がかりが欠けている。

戸波江二先生の古稀を祝う会 

日時:2017年12月9日(土) 18時-20時(17時30分より受付開始) 
場所:リーガロイヤルホテル東京
169-8613 東京都新宿区戸塚町1-104-19
TEL:03-5285-1121
祝う会に関する連絡先については月報をご確認ください。